相続放棄をご自分で行う手順

 相続放棄はご自身でできます。この不景気の世の中で多少とも出費は抑えたいものです。これから相続放棄をご自身でなさろうとお考えの方は、参考にしてみてください。手続きでわからないことがありましたら、裁判所に相談に伺うのもよろしいかと思います。

@被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続放棄申述書」を提出します。管轄裁判所がわからない場合は裁判所のホームページで調べるかお近くの裁判所にお問い合わせください。申述書は各家庭裁判所の窓口に備え付けてありますし、裁判所のホームページからもダウンロードできます。 なお、申述書に記載する事項は、相続人及び被相続人の住所・本籍地及び、相続を知った日、相続放棄をする理由、相続財産の内容(土地建物の有無、負債等)になります。相続財産の内容がわからなければ「不明」と記載すればよいでしょう。業者に依頼しなくとも、申請者自身で記載できますし、申請者自身しか知りえない事柄ですので、むしろ申請者ご自身が記載することが妥当であるといえます。

申請書は管轄裁判所に持参もしくは郵送することになります。提出に必要な費用として、印紙800円と切手が必要となります。印紙は申述書に貼付します。切手は、申述書と一緒に裁判所に提出します。切手の種類と枚数は、それぞれの管轄裁判所によって異なりますので、裁判所まで問い合わせてください。この切手は、裁判所と相続放棄申請者との照会書(回答書)のやり取りなどの際の郵送切手として使用されます。

Aところで、相続放棄は相続人の順位に従って順番に行います。まず、第一順位の相続人の相続放棄をします。その後、第二順位の相続人の放棄をし、最後に第三順位の相続人の放棄をします。第一順位の相続人がいない場合は第二順位の相続人から、第一及び第二順位の相続人がいない場合は第三順位の相続人から相続放棄の手続きを行います。異順位の相続人の放棄を同時にすることはできません。なぜならば、たとえば第一順位の相続人がいる限り第二順位の相続人はまだ相続人の地位になく、第一順位の相続人が相続放棄を完了した後に初めて相続人となるからです。

Bまた、申述書と一緒に戸籍謄本及び住民票(もしくは戸籍の附票)を裁判所に提出しなければなりませんが、以下の要領で戸籍謄本等を収集・提出することになります。

相続人が第一順位(亡くなられた方の配偶者やお子様の場合)であれば、被相続人の死亡したことが記載されている戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、及び被相続人の死亡時の住所が確認できる住民票もしくは戸籍の付票となります。この場合はいたって簡単です。

第一順位の相続人の全員が亡くなっておられるか相続放棄を完了している場合にはじめて、第二順位の相続人(亡くなられた方の父母、祖父母)の相続手続きを始めることになります。この場合は、第一順位の相続人の放棄の際に必要となる戸籍謄本(第一順位の放棄手続きの際に提出している場合は不要)の他に、第二順位の相続人の生存及び亡くなられた方との相続関係を確認できる戸籍謄本が必要となります。具体的にいえば、亡くなられた方の戸籍を出生まで遡って収集した戸籍の中に第二順位の方の死亡年月日が記載されていれば、その方は亡くなられているので相続放棄する必要はなく、その方の戸籍をそれ以上収集する必要はありません。もし、死亡年月日が判明していない方がおられる場合は、その方の戸籍を追って収集し、生死を確認し、生存が確認されれば、その戸籍を裁判所に提出することになります。

なお、第二順位相続人の戸籍について、被相続人の両親の戸籍まで遡ればよいのか、祖父母、曾祖父母のものまで収集するのかについて疑問が生じます。この点、第二順位相続人の方の生年月日により異なりますので少し厄介かもしれません。例えば、曾祖父が戸籍上105歳程度である場合、ご健在である可能性もありますので、曾祖父の生死を証明するため、戸籍を取得する必要があります。戸籍上120歳程度の曾祖父なら、すでに亡くなっているのが普通ですので、その曾祖父の生死を確認するために戸籍を取得する必要はありません。なお、何歳の方まで戸籍を収集すべきなのか、各裁判所(裁判官)それぞれの判断になりますので、管轄裁判所に直接ご確認をお願いいたします。

第一相続人及び第二相続人の全員が亡くなっているか相続放棄を完了した後、初めて第三順位(亡くなられた方の兄弟姉妹)の相続人の放棄手続きを致します。この場合は、また異なる戸籍謄本が必要となります。第一及び第二順位の相続放棄の際に必要となる戸籍謄本の他に、第三順位相続人(兄弟姉妹)の生死を確認する戸籍が必要となります。但し、すでに第一及び第二順位の相続放棄をしている場合は、それぞれの戸籍謄本はすでに裁判所に提出済ですので、第三順位の相続人の生存を確認できる戸籍謄本だけで提出することになります。

なお、第三次順位の相続人の放棄の場合、その方(被相続人の兄弟姉妹)が亡くなっている場合は、その方にお子様が(被相続人の甥姪)がおられる場合は、その方が代襲相続人となり相続放棄をすることになります。その場合は、前述の戸籍の他に、亡くなられた第三順位の相続人の戸籍を出生から死亡に至るまで収集し、さらに代襲相続人の戸籍も取得する必要があります。

C申述書の提出は、管轄の家庭裁判所の窓口に相続人が直接持参してもよいですし、郵送でもできます。

申述書の提出後、2週間程すると家庭裁判所から「相続放棄の申述についての照会書」等の回答依頼書が申立をしたそれぞれの相続人に届きます。

この回答依頼書には、いつ相続することを知りましたか、相続放棄をするのは何故ですか、被相続人の財産を処分したことはありませんか、などの質問が書いてあります。この質問に回答し、家庭裁判所へ返送します。なお、回答依頼書ではなく、裁判所から直接電話で質問される場合もあります。この場合は、質問されたことに素直にお答えいただければ問題はありません。

特に問題がなければ、その後2週間程すると「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。(家庭裁判所によっては2〜3週間かかる場合もあります。それぞれの裁判所の忙しさの程度等により異なるようです。)

この通知書には、「相続放棄が受理されました」と書いてあります。これによって、相続放棄が認められた人は最初から相続人でなかったことになります。すなわち、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も引き継がなくてよいことになります。以上で手続は完了です。 

相続放棄後の対応の仕方

 「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と民法では規定されています。自分の財産と同じように管理してくださいということです。これに関連することを以下にご記載します。

@ もしも被相続人が残した借金の債権者から請求が来た場合、相続放棄した方は何ら対応する必要はありません。既に相続放棄しており相続人ではありませんので、一切の法的な義務を負わないからです。また、債権者は裁判所に問い合わせて、相続人が相続放棄したか否か調べることができ、相続放棄の有無を調べるのは債権者の仕事でもあるからです。従って、債権者からの請求に対して無視してもかまわないと思います。

しかし、穏便に事を終わらせたいと思われる場合は、債権者に相続放棄の手続をした旨を伝えて、相続放棄申述受理通知書をファックスなどで送付し対応することになります。債権者によっては、相続放棄した証明書の提出を要求してくる場合もあります。この証明書は、相続放棄された方が裁判所に申請すれば数百円で取得可能です。債権者と問題なく事を終わらせたいと思われる場合は、この証明書を郵送してあげることでもよろしいかと思います。

また、内容証明郵便を債権者に送り、相続放棄した旨を伝えることでもよいと思います。それにより、まともな債権者からの催促はなくなるでしょう。弊事務所でも内容証明の作成及び郵送業務を承っております。

A 相続放棄は単独で出来ますが、他の共同相続人や次順位相続人に影響を及ぼす恐れがありますので注意が必要です。ご自分の相続放棄をした後に、他の相続人に連絡することも必要かと思います。また、あらかじめ他の相続人や次順位相続人に連絡をとって、協力して相続放棄の手続きを行ったほうがよいかもしれません。

      
B また、相続放棄をした後に相続財産の全部又は一部を隠したり消費した場合は、単純承認したとみなされてしまいますので注意が必要です。

C 疎遠になっていたお母様の相続放棄をした方から、お母様の勤務先の上司から、お母様の身の回りの品物(お母様は住み込みでお仕事をされていたようです)を処分してくれないかと要求されたような場合はどうでしょう。このような場合、相続放棄をしたので自分は無関係であると回答するのも1つの方法ですが、一旦、第三者(相続人でない親族等)に処分を依頼し、処分業者への処分費を第三者に立て替えてもらい、その後、別の形で、第三者に処分費相当額を渡すことにより対応できるかと思います。すなわち、被相続人の財産の処分に直接的に係わらないようにさえすれば対応できるかと思います。

相続・離婚・内容証明
細川行政書士事務所
TEL:0467-45-8668