当ページをご覧いただきまして、ありがとうございます。ここでは、離婚協議書の文例と書き方について御案内いたします。これ以外にも、様々なケースに合わせた記載方法がありますので、臨機応変に対応していただければと思います。
1、離婚協議書の文例
離婚協議書 |
注) 以上の他に、年金分割の合意をする場合があります。年金分割の合意は、私文書では日本年金機構が受け付けてくれません。したがって、当事者間で作成した離婚協議書に記載しただけでは無効です。公正証書にするか、公証人に認証してもらう必要があります。参考文案は、後記いたします。
2、記載事項
(1) 離婚協議する旨の合意
・「離婚協議書」では、夫を「甲」、妻を「乙」とし、夫と妻の氏名と生年月日を記し、協議離婚の合意があった旨を記します。
(参考例)
・「甲と乙は、本日、協議離婚することに合意し、乙は、離婚届出用紙に所要の記載をして署名捺印し、甲にその届出を託すこととし、甲は、速やかにこれを届け出る。」
(2)親権者・監護権者を定める
未成年の子供の氏名と生年月日を記し、親権者を記します。親権者と監護権者を別に指定した場合は監護権者も記します。第一子を「丙」、第二子を「丁」とします。
(参考例)
・「当事者間の長男太郎(平成10年3月7日生)の親権者を父である甲とし、監護権者を母である乙とする」
なお、親権者と監護権者を別にすると、実際に生活していくうえで手間がかかることがあります。父が親権者で、母が監護権者の場合、子供が学校から親権者の署名捺印を要する書面を持参した場合、監護権者の母親は親権者である父親と連絡を取り、その書面に元夫の署名捺印を依頼することになりますので、元夫と関わりたくない場合などは、親権者と監護権者を分けないほうが一般的です。
(3)子供の養育費について
養育費の支払い期限と金額、支払い方法について明記します。
(参考例)
・「当事者間の胎児(平成20年4月1日出生予定)が出生したときは、甲は乙に対し、同人の養育費として、同人が出生した月から同人が20歳に達する日の属する月まで、1か月金2万円ずつを、毎月末日限り、乙の指定する預貯金口座に振り込む方法により支払う。」
(4)子供との面会交流について
面会交流を認めることを明記し、面会の回数、面接日時、場所、方法等を記載します。
(参考例)
・「甲は乙が長男と月1回程度面接交渉することを認める。その具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉を尊重し、当事者間で協議する。やむを得ない事情で日程を変更する必要が生じたときは、可能な限り早期に連絡を取り合い、誠意をもって日程変更の協議をする。」
(5)財産分与について
財産分与の金額、支払い方法等を記載します。
(参考例)
・「甲は乙に対して、財産分与として、下記の不動産を譲渡することとし、財産分与を原因とする所有権移転登記手続をする。ただし、登記手続費用は、甲の負担とする。」
(6)慰謝料について
離婚原因が、一方の不法行為である場合等に記載する場合がございます。慰謝料の金額、支払い方法等を記載します。
(7)その他
以上の他に、別居中の婚姻費用の精算、退職金の分割、自家用自動車の譲渡、家財道具の分け方、生命保険の扱い、子供の塾代、習い事の費用、引っ越し代等の分担等を記載することもあります。
(8)清算条項
本協議書に書いてある内容以外の金銭・権利等の請求をお互いにしないことを記します。
(9)通数を記載
作成した協議書を夫婦それぞれが保有するために2通作成します。
(10)日付表示
「離婚協議書」を作成した年月日を指定します 。
(11)当事者の住所・氏名を記載
夫と妻それぞれの氏名を記載し、押印します。
(注)上記の内容は、ご夫妻当事者間で文書で離婚協議書を作成する場合の例のご案内になります。さらに公正証書にする場合は、強制執行認諾条項が記載されることもあります。場合によっては、年金分割の合意内容を公正証書に記載したり、私文書にして公証人に認証してもらうこともあります。以下に、ご案内いたします。
<その他の事項>
1)年金分割について
離婚に際しての年金分割の手続きは、ご夫妻で日本年金機構に出向いて手続きをされる場合や、一定の条件の場合に妻がお一人で年金機構に出向いて手続きができる場合は、年金分割の合意書を作成する必要はありません。しかし、それ以外で、年金分割の合意を行う場合には、年金分割の合意書を作成する必要があります。その方法について記載します 。詳細は離婚と年金分割を参照して頂ければと思います。
年金分割の合意は、離婚公正証書に記載するか、又は、私文書の合意書にして公証役場で認証してもらう必要があります。認証を受けていない私文書では、日本年金機構で受け付けてもらえません。公正証書にする場合、年金分割の部分のみ日本年金機構に持参できるように抜き出して抄本にしてくれる公証人もおります。
弊事務所では、年金分割のご依頼を承る場合は、公正証書に記載せず、年金分割の文言を公正証書とは別の私文書にして公証人の認証を受ける形にしております。この方が公証証書に載せるより費用が安くなります。
(参考例)
甲(第1号改定者)及び乙(第2号改定者)は実施機関に対し、当事者間の対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意し、これを証するため本合意書を作成する。
甲(昭和33年3月7日生)(基礎年金番号 0120-222222)
乙(昭和36年6月28日生)(基礎年金番号 0120-333333)
2)強制執行認諾条項
公正証書を作成する場合に記載する条項です。公証人が記載しますが、一般的な文案は以下になります。
・「乙は、本公正証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」
3、文案作成上の注意点
つぎに、離婚協議書を作成する上での文章上の注意点を挙げてみます。離婚協議書には、当事者をはっきり書くこと、給付内容をはっきり書くこと、給付意思・給付名義をはっきり書くことが重要です。
(1)当事者をはっきり書く
夫と妻が誰であるかを明示することです。通常は住所と氏名で行います。もし、ご夫妻がすでに別居しており、現住所と住民票上の住所が異なるときは住民票上の住所を記載する事になります。氏名については、本名を記載します。
(2)給付内容をはっきり書く
相手に支払う対象、例えば金銭を支払う場合は、支払う当事者、受け取る当事者、支払う対象物、支払期限等を明確に書くということです。
すなわち、誰が、誰に、いくらの金額を、いつ迄に、どのような方法で(手渡し若しくは口座振込み)支払うということを明記することです。
1)支払う当事者が複数の場合
例えば、離婚の養育費の支払いは、父が、子供の親権者である母親に支払う事例が一般的ですが、連帯債務者として祖父も「連帯して」支払うよう記載する事例もあります。このように支払者が複数で連帯して支払うような場合、必ず、「連帯して」の文言を入れる必要があります。「父親と祖父は養育費として連帯して金100万円を支払う」と記載します。これを、「父親と祖父は、子供の養育費を支払え」と記載すると、連帯債務ではなく分割債務の規定が適用されることになり、父と祖父は2人で100万、すなわち1人は50万円ずつ支払えば良いことになってしまうからです。
また、父が養育費を支払い、祖父が連帯保証人になる場合において、「父は養育費を支払い、祖父は連帯債務者の責任を負う」と記載したとすると、祖父については「支払う」と言う文言がかからず、直接的な支払い義務がないと判断される可能性もあります。そうならないように、「祖父は、父と「連帯して」養育費を「支払う」」と記載することになります。
2)支払う金額の特定
金銭の受け渡しが発生する場合、確定金額が明示されていることです。確定金額が明示できない場合は、その金額を算出するに必要な事項(元本、利息、起算日、終期といった事項)を明示することが必要です。例えば、「財産分与として、100万円を2015年12月末日までに支払う」というように、100万円という金額を明確に記載します。
3)支払期限の特定
支払う期限を明確に記載するということです。「2015年1月末日まで」というように、期限をはっきり記載します。そうしないと、相手がいつから支払義務を怠ったか明確にできないからです。
4)支払方法を記載
手渡しで支払うか、口座に振り込んで支払う等になります。
(3)給付意思をはっきり書く
金銭支払いを内容とする場合は、「支払う」とはっきり書きということです。これに対して、「支払うこと」、「支払うものとする」、「支払わなければならない」、「支払う義務を負う」等は、確認条項、道義条項等とお混同されやすく、用語としては適切ではないからです。
(4)給付名義を明確に書く
具体的には、財産分与なら「財産分与として」、養育費であれば「養育費として」、等の表現を用いて記載するということです。養育費を、「和解契約金として」、「解決金として」等の別の名義で記載すると、名義の意味が異なり、強制執行の範囲も異なり、適切ではないということです。また、「養育費及び慰謝料として金〇円」との記載では、養育費の額と慰謝料の額が不明確であり、それぞれを別々に記載したほうが妥当です。
4、弊事務所のサポート
弊事務所では、離婚相談、離婚協議書作成及び離婚公正証書作成のサポートを承っております。参考までに、手数料をご案内いたします。
(料金)
・離婚協議書作成 20,000円(公正証書にする場合は1万円追加)
・離婚協議書添削 8,000円
>>離婚公正証書作成の公証人の手数料へ