◆特別受益とは
相続人に対して遺贈及び一定の生前贈与といった財産分与がなされている場合、その遺贈等を「特別受益」とよびます。
民法では、遺産分割時にこれを清算する制度を設けています。 すなわち、遺産分割の際に、相続財産に特別受益である生前贈与を加えたものを相続財産とみなし(みなし相続財産)、これを基礎として各相続人の相続分(一応の相続分)を算出し、特別受益を受けた者については、この一応の相続分から特別受益分を控除し、その残額をもってその特別受益者が現実にうける相続分とする。
このような、特別受益を相続分算定の基礎に参入する計算上の扱いを、「持ち戻し」といいます。この制度の趣旨は、相続人間の公平をはかり、被相続人の意思にも合致するという点にあります。
◆特別受益の範囲
1、遺贈
・全てが対象になります
2、生前贈与
(1)「婚姻、養子縁組のための贈与」
・持参金、嫁入り道具、結納金、支度金など、婚姻または養子縁組のために特に被相続人に支出してもらった費用は含まれる。
・通常の挙式費用は含まれない。
(2)「生計の資本としての贈与」
・かなり広い意味に解されており、事例ごとに検討すべきでしょう。しかし、生計の基礎として役立つような贈与は一切含まれるとされており、相当額の贈与は特別の事情がない限り全て含まれると解されます。
<対象となる場合>
・特定の子が別の所帯を持つ際に不動産を分与された。
・営業資金を贈与された。
・農家において、農地を贈与された。
・特定の子だけ大学教育をうけ学費を受けている。(判例は分かれている)
<対象とならない場合>
・生計の基礎とならないもの(特定の子だけが小使銭を多くもらった)
・扶養のために付与された財産(扶養は義務の履行であり贈与でない為)
3、生命保険金と死亡退職金
特定の相続人を受取人とする場合は、純粋な意味での相続財産にならない。しかし、その効果においては遺贈と同様な意味を持つため実務上問題となる。学説上は、相続人間の公平を考慮して持ち戻しの対象とすべきとするのが多数説であるが、判例は分かれています。
◆特別受益者の範囲
1、特別受益者とは、特別受益を受けた「共同相続人」です。相続人以外の第三者は含まれません。第三者に対しては、遺留分減殺請求をすることになります。
2、問題点
(1)代襲相続人
ア、被相続人が特別受益を受けた場合
・代襲相続人は、被代襲相続人の持ち戻し義務を引き継ぐとする見解が有力。
イ、代襲相続人自身が特別受益を受けた場合
・受益の時期に係わらず、持ち戻し義務を負うとする見解が有力。
(2)包括受遺者
・相続人でないため、対象になりません。
◆特別受益の確定
・家庭裁判所の審判事項かどうか明文規定はありません。(寄与分は明文規定あります)実務上は家事審判とされています。
裁判所のホームページ 〜 家事調停手続 〜
◆相続分なきことの証明書(特別受益証明書)
登記実務上、「相続分なきことの証明書」が提出されることがある。これは、共同相続人の1人あるいは一部の者が「私はすでに相続分を超過する贈与を受けているので、被相続人の死亡による相続については相続する相続分はないことを証明します」という趣旨を記した書面で、これに作成者の印鑑証明書を添付して不動産相続登記申請するものです。相続放棄と違い、債務は引き継ぐことになるので注意が必要です。
証 明 書 ○○○は、生計の資本として被相続人からすでに財産の贈与を受けており、被相続人の死亡による相続については、相続する相続分の存しないことを証明します。
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