遺言書でできる身分に関する事項

 遺言書でできることは、大きく分けて、身分に関する事、相続に関する事、遺言執行に関する事、その他事項に分けられます。まず、身分に関する事項からご説明いたします。

1、認知

 認知とは、婚姻していない男女間に生まれた子供を、男性が自分の子供であると認めることをいいます。認知は遺言によってもできるのです(民法781条2項)。但し、遺言によって認知をしても、役所に認知届をしなければ法的効果は生じません。したがって、役所に認知届けをするために、遺言執行者が必要となります。遺言執行者は遺言書で定めてもよいし、定めてない場合は利害関係人の請求により、裁判所が選任することになります。尚、認知の対象が成年に達した子である場合はその子の承諾が、出産前の胎児である場合は母親の承諾が、それぞれ必要になります。

2、未成年後見人の指定

 「未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定できる。但し、管理権を有しない者はこの限りでない。親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定によって未成年後見人の指定をすることができる」(民法839条)。つまり、未成年者の親権者・未成年後見人は自分が死んだ場合に備えて、未成年後見人を指定できるのです。未成年後見人を指定しておけば、遺言書で指定した後見人が直ちに未成年者の世話をしてくれることが期待できます。

3、未成年後見監督人の指定

 未成年後見人に何か不都合が生じた場合でも、すぐに対応できるように、未成年後見監督人を指定できます。

遺言書でできる相続に関する事項

1、推定相続人の廃除

 推定相続人の廃除を遺言書に記載できます。この事項は、遺言執行者による執行行為、裁判所に対する廃除請求の必要があります。なお、生前の推定相続人の廃除は認められる可能性が低く、遺言による推定相続人の廃除はさらに低いと思われます。したがって、遺言で書いても実現の可能性は極めて低いと思われます。

2、推定相続人廃除の取消し

 推定相続人の廃除の取消しを遺言書に記載できます。この事項は、遺言執行者による執行行為、裁判所に対する廃除取消し請求の必要があります。請求がなされた場合、裁判所は、遺言者の真意に出たものと確認されれば廃除取消しの審判をします。

3、相続分の指定及びその委託

 遺言者は遺言において、相続人の相続分を指定することができます。又、第三者に相続分の指定の委託をすることができます。しかし、遺留分に反することはできません。相続分指定とは、「妻甲に5分の2、子乙に5分の2、子丙にに5分の1」というように指定することです。

4、特別受益の持ち戻しの免除

 民法903条に「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がある場合は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定によって算定した相続分の中からその贈与又は贈与の価額を控除し、その残額を以ってその者の相続分とする。遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分の関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する」と規定されています。赤字でしめした部分を、遺言でできるということです。すなわち、被相続人が一部の相続人に事前に財産を与えていた場合、遺留分に反しない範囲で他の相続人に返す必要がないように遺言で示すことができるのです。

5、遺産分割方法の指定およびその委託ならびに遺産分割の禁止

 法定相続分もしくは指定相続分により共同相続人の各自の相続分が定められても、それは、あくまで持分割合であって、具体的に「土地は妻、預金は子供」というように分けるのは、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で行う必要があります。しかし、この遺産分割協議より被相続人の遺言で「土地は子供、預金は妻」と書かれていた場合は、遺言を優先させるということです。又、5年間を限度に遺産分割協議を禁止することができます。被相続人が事業を行っている場合などに、混乱回避のためには有効と思います。

6、共同相続人の担保責任の減免、過重

 相続財産を遺産分割した後、財産に瑕疵があった場合、各共同相続人は相続分に応じて担保しなければならないと規定されてます。例えば、建物に壊れている部分があって、遺産分割の際に評価した価値より低かった場合、他の相続人がその少なくなった価値を保証しましょうということです。遺言で、この担保責任を減免、加重できるということです。担保責任を免除するのが一般的です。遺産分割した後に担保責任の問題で紛争が蒸し返されないようにするためです。

7、遺贈

 遺言者は、包括的又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を、遺留分に反しない限度で処分できるのです。すなわち、「甲土地を乙に遺贈する」「遺産の2分の1を乙に遺贈する」と遺言できるのです。前者を「特定遺贈」、後者を「包括遺贈」といいます。遺贈する相手は、相続人でもよいし、相続人以外の第三者でもかまいません。しかし、遺贈を原因として不動産登記する場合は、相続を原因として登記する場合より登録免許税が多くかかります。したがって、相続人に対して特定財産を与える場合は、「甲土地を相続人乙に相続させる」として、遺産分割の方法を指定したほうがよいでしょう。

8、遺贈の減殺の順序・割合の定め

 遺贈が相続人の遺留分を侵害した場合、相続人は遺留分減殺請求できます。この場合に、遺留分減殺請求の対象物件を特定の物件に限定したり、価格弁済の方法に限定したりすることができるのです。事業を行っている場合、長男に事業財産を与えたい場合などに、減殺請求を価格弁済に限定することも考えられます。

遺言書でできる遺言執行に関する事など

1、遺言執行者の指定およびその委

 遺言執行者として、弁護士や行政書士を指定することです。遺言の執行に際して、全ての場面で遺言執行者が必要とされるわけではありません。しかし、あらかじめ指定しておくと、スムーズに遺言は執行されるでしょう。

2、遺言執行者の復任権

 遺言執行者が、他の者に遺言執行を依頼することができることを明記することです。

3、遺言執行者の報酬
 
 遺言執行者の報酬を定めることです。

4、その他事項

・祖先の祭祀主宰者の指定
・財団法人設立のための寄付行為
・信託の設定
・生命保険の受取人の指定・変更
・遺言の取消し

相続・離婚・遺言・内容証明
細川行政書士事務所
TEL:0467-45-8668