不倫に関する慰謝料の判例

 弊事務所では、不倫問題についてご相談をお受けしております。その折によく、慰謝料額はどの程度か、相場はどの程度か、とのご質問を受けることがあります。
 
 その慰謝料ですが、精神的苦痛に対する損害賠償ですので、精神的苦痛の感じ方を客観的に計ることが困難であると同様に、その金額を客観的に明示することは難しいものです。

 とはいえ、お客様は一定の金額を目途に慰謝料請求したり、請求された慰謝料額を減額交渉するものであり、相場的な額を知りたいとの考えるのは当然でしょう。そこで、慰謝料額の判断基準と判例をご案内いたします。

<慰謝料の判断基準>
 
1、「不貞開始までの婚姻期間」がどれくらいの期間か

 婚姻期間は、慰謝料額を決定するうえでの重要な判断基準になっています。婚姻時から不貞開始までに平穏な婚姻期間が長く続いていた場合は、配偶者の不貞行為により受けた他方の配偶者の精神的苦痛も大きいことが通常であり、慰謝料も増額される要因になります。

2、不貞配偶者と他方の配偶者との間の「子供の有無」

 子の有無も慰謝料額を算定するについて重要な要素になります。特に、成熟していない子のある夫婦の一方の不貞行為によって婚姻関係が破綻したばあい、他方の配偶者は一人で子を育てなければならなくなり、精神的苦痛は大きくなると判断されます。

3、不貞配偶者と浮気相手の「不貞期間」がどれくらいの期間か

 不貞期間の長短にかかわらず受ける精神的苦痛に変わりはありませんが、例えば、1回きりの不貞行為と何年にもわたった継続的な不貞関係が続く場合とでは、不貞の被害者が受ける精神的苦痛も大きさが違うのが通常です。不貞期間が長ければ長いほど慰謝料額も高くなる傾向にあります。

4、不貞行為が不貞配偶者と他方の配偶者との「婚姻関係に与えた影響」がどうであったか

 婚姻関係は破綻したのか、それとも継続したのか、によって慰謝料額は異なります。不貞行為発覚後に別居中、離婚に向けての協議中、離婚調停・訴訟等の法的手続き中という場合も、同様に慰謝料額の判断基準になります。

<判例の事例>

 
以上のような判断基準によって出された判例を、当事者夫婦の婚姻期間の長さごとに、いくつか挙げてみます。

1、婚姻期間が1年未満

(1)夫が不貞行為を行った事例で、結婚から不貞開始まで約半年、子供は1人おり、夫婦は同居していた。不貞回数は2回。この結果、婚姻関係は破綻し、夫婦は別居するに至る。90万円の慰謝料判決となった。

 慰謝料額の増額要因としては、不貞行為により別居状態になったこと。別居までの婚姻期間は半年と短いが、両者の間には幼い子供がいること。被告が不貞関係を否定し、謝罪をしていないことが挙げられた。

 慰謝料額の減額要因としては、不貞期間は半年と短いこと。不貞行為が開始された時点で、婚姻関係は相当悪化していたことが挙げられる。

(2)夫が不貞行為を行った事例で、結婚から不貞開始まで7か月で、子供が1人、不貞回数は不明。婚姻は破綻し離婚調停が不調に終わり係争中。なお、不倫相手は夫婦が別居中で離婚予定であるとの言葉を誤信していて不貞行為を開始した。結果として、100万円の慰謝料判決となった。

 慰謝料額の増額要因として、不貞行為が婚姻破綻の原因になったこと。長男の出生後間もない時期に不貞行為がなされたこと。

 慰謝料額の減額要因として、不倫相手は婚姻関係が破綻しているとの認識のもとに交際を開始したこと。婚姻期間、不貞期間がともに比較的短いことが挙げられた。

2、婚姻期間が1年以上3年未満

(1)妻が不貞行為を行った事例で、不貞開始まで2年の婚姻期間があり、子供が1人、不貞期間5か月、肉体関係は複数回。その結果、婚姻関係は破綻に瀕し、別居状態になる。相手からの謝罪はない。150万円の慰謝料判決となった。

 慰謝料額の増額要因として、不貞行為結果として婚姻が破綻状況になったこと。

 慰謝料額の減額要因として、元々夫婦間の関係は良好とはいえず、夫が妻に婚姻関係を修復に向けて努力する状況にあったこと。

(2)夫が不貞行為を行った事例で、不貞開始まで2年半の婚姻関係があり、子供2人、不貞期間2年、不貞回数3回。妻は不貞行為が発覚後、ショックを受け家事ができなくなり、不眠症に陥り、自傷行為をするようになり、見かねた夫につれられ、心療内科を訪れ、1年間通院し、「解離性障害を合併する鬱病」と診断を受ける。その後、夫が妻に謝罪し婚姻関係は相当程度修復されている。慰謝料額50万円の判決となった。

 慰謝料額の増額要因として、不貞期間が2年続いたこと。2人の未成熟子がいること。心療内科への通院を余儀なくされたこと。

 慰謝料額の減額要因として、不貞開始までの婚姻期間が2年半にすぎなかったこと。不貞回数が3回に止まったこと。夫が妻に謝罪し、婚姻関係が相当程度修復されていること。

3、婚姻期間が3年以上5年未満

(1)夫が不貞相手に対して妻とは離婚したと述べ、結婚前提の交際を申し入れ、不貞相手が間もなく嘘であることを知って速やかに夫との関係を解消した事例。

 不貞開始までの婚姻期間4年、子供1人、妻とは同居していた。不貞期間は1か月。結果として婚姻関係は破綻した。夫が離婚したと相手を騙して結婚を前提に交際を申し入れ相手がそれを信じたが、相手は離婚合意の内容を確認しようとしなかったのであり、過失は認められる。慰謝料額80万円の判決。

 慰謝料額の増額要因として、婚姻関係が修復困難な状況に陥ったのは、不貞行為が原因である。

 慰謝料額の減額要因として、不貞行為に相手の故意があったと認定するには疑問の余地があること。相手が離婚の合意をしていないことがわかった後は、速やかに不貞関係を解消したこと。不貞行為の1次的責任は、夫が負うべきであること。

(2)内縁関係の破綻を理由に不貞行為慰謝料が認められた事例で、4年間の内縁関係経過後に不貞行為が開始された。不貞行為はあったが、不貞期間1年以上、不貞回数は不明。その結果、内縁関係が破綻した。慰謝料額150万円の判決。

 慰謝料額の増額要因として、内縁関係が破綻したこと。

 慰謝料額の減額要因として、内縁関係をやめ婚姻届を出すこともできるのに、内縁関係に止まっていた。不貞行為以外にも、内縁関係破綻の要因がある。男の方が積極的に相手に不貞行為を働きかけていたこと。

4、婚姻期間が5年以上10年未満

(1)同一の不貞相手との間に成立した2度の示談に基づく慰謝料とは別に、示談成立後の新たな不貞行為について慰謝料を認定した事例。不貞行為により婚姻関係は破綻していない。子供あり。不貞回数1回。慰謝料として50万円の判決。

 慰謝料額の増額要因として、2度にわたる各示談に違反する形で不貞行為が行われ、精神的苦痛は甚大である。

 慰謝料額の減額要因として、以前の各示談の不貞行為については、各示談書により定められた慰謝料によりすでに慰謝されている。2度目の示談成立以降の不貞行為は1回であり、交際期間も長くないこと。

(2)妻が、子が通うスイミングクラブのインストラクターと不貞行為に及んだ事例。不貞開始までの婚姻期間9年10か月。不貞期間4か月。子供2人。結果として婚姻関係は破綻した。相手の男性は謝罪をせず、肉体関係を否定。妻が積極的に不倫関係にのめり込んだ。慰謝料は300万円の判決。

 慰謝料額の増額要因として、婚姻関係は平穏だったこと。相手は妻が既婚者であることを十分に認識していたこと。相手の男性が肉体関係を否認するなど、不誠実な対応に終始していること。

 慰謝料額の減額要因として、婚姻関係が破綻した最も大きな要因は、妻が夫に対する貞操観念を顧みず不貞を働き、積極的に相手の男性と関係を持った不道徳な行いにあること。

5、婚姻期間が10年以上20年未満

(1)婚姻期間が12年、不貞期間1年未満、子供2人、不貞回数3回、結果として婚姻関係は継続することになった事例。慰謝料150万円。

 慰謝料額の増額要因として、12年にわたる婚姻生活、不貞行為により婚姻関係が破綻したこと。

 慰謝料額の減額要因として、不貞行為が3回にとどまる。その後、不貞行為は継続していないこと。

(2)婚姻期間が13年、不貞期間半年、回数2回、子供2人、結果として離婚に至った事例。慰謝料60万円。

 慰謝料額の減額要因として、以前から婚姻関係悪化していたこと、不貞行為が離婚の直接要因とは言えないこと(ただし、離婚に至る要因にはなった)。不貞行為が一過性のもので、継続していないこと。

6、婚姻期間が20年以上

(1)婚姻期間が20年以上、不貞期間半年、子供3人、一時家庭内別居したが婚姻関係は継続された事例。結果として慰謝料10万円。

 慰謝料額の減額要因として、交際の程度が数万円をプレゼントするとか、2人だけで旅行するなどにとどまり、肉体関係があったと認めるに足る証拠がないこと。

(2)婚姻期間が20年以上、不貞期間が1年未満、不貞回数4回、子供2人、婚姻関係は破綻した事例。慰謝料120万円。

 慰謝料額の増額要因として、婚姻期間が20年と長く、配偶者は体調不良を訴え通院している、夫婦は別居に至ったこと。

 慰謝料額の減額要因として、婚姻関係が破綻していたとまでは認められないが、妻が夫に不信感を抱き、夫婦関係が円満でなかったこと。破綻をうかがわせる事情として、人前で離婚を口にすることがあったこと、夫婦げんかが多く離婚を前提としての話し合いを求められたこと。夫婦間の性交渉が亡くなったことなど。

(3)婚姻期間が30年、不貞期間8年、子供1人、婚姻関係は破綻した事例。慰謝料額300万円。

 慰謝料額の増額要因として、不貞行為発覚が離婚の主要な要因であること。婚姻期間が30年以上に及ぶこと。不貞期間が認めただけで8年にも及ぶこと。

※以上、不貞慰謝料の算定事例集(新日本法規出版)を参考にしています。

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